Quoridorって何?
ボードゲームのひとつです。その中でもアブストラクトゲームと呼ばれるものになります。
アブストラクトゲームとは、ゲームの情報が全て公開されていて運の要素が一切ないようなゲームのことです。二人零和有限確定完全情報ゲームとも呼ばれたりします。
囲碁や将棋、チェス、オセロなどを想像してもらえると分かりやすいと思います。
QuoridorはMirko Marchesiさんによってデザインされ、1997年にGigamic社から発売されました。
Gigamic社はフランスのボードゲーム会社です。Quoridorの他にもQuarto!やPylos、Quixo等のシンプルで戦略性の高い、そして何よりデザインの良いゲームが多数発売されています。
作者のMirko Marchesiさんは、Quoridorの前に、板の枚数やボードサイズが違うだけで内容はほぼ同じのBlockade、Pinko Pallinoというゲームも出しているようです。→各ゲームについて どうやらイタリアの方らしいです
1997年にMENSAのトップ5ゲームに選ばれたり、1998年にGames Magazine Game of the Yearに選ばれたり、その他にもカナダやフランス、ベルギーなどで色々な賞をもらっている様子です。
この"Quoridor"という名前ですが、廊下という意味の"corridor"という英単語と、英語のwhereのように使われるラテン語の"quo"(~するところ、どこへ、等の意味)を合わせてつくったのかな…と勝手に想像しています。
何といってもルールが非常にシンプルです。
あまり知名度は高くないゲームですが、初めてプレイする人にもルールを説明しやすいので人に薦める敷居が低いです。
1プレイにかかる時間は大体15分前後です。もちろん早指しで3分以内に終わらせることもできますし、長考すれば1時間かかる場合もあるでしょう。
囲碁19路盤や将棋程"重く"はなく、囲碁9路盤やオセロぐらいの"軽さ"だと思って頂ければ…。
デザインが良いのも魅力のひとつです。シンプルな駒、横長の板、板を差し込む隙間のあるマス目と、それら全てが載るボード。ルールがシンプルなので、使う"道具"もシンプルなものになっています。
Quoridorに限らず、アブストラクトゲームはこのようなシンプルな構成のものが多い印象があります。
アブストラクトゲームなので、良くも悪くも運が絡みません。
このようなタイプのゲームは、時として敬遠されます。自分より強い人には絶対に勝てないからです。
負け続けるとイライラしますし、負けの責任を運に押しつけることもできないので、さらにイライラします。
競争ゲームでターン制なので、どちらかが先にゴールに到達します。同時にゴールということはありえません。よって、引き分けがありません。
勝ち負けがはっきり決まることは良いことだと思いますが、惜しむらくは先手が若干有利になっていることです。それを解消するためのパイルールを採用しにくいのも、Quoridorの欠点と捉えられるかもしれません。
有名なゲームと比較してみましょう。
囲碁のように初心者がゲームの進行をイメージしづらいということもなく、将棋のように複数の駒の移動を覚える必要もなく、オセロのように駒をひっくり返す手間もない。
囲碁の石のように先を予測して板を置き、将棋のように駒を動かしゲームの進行が一目で分かり、オセロのようにルールがとてもシンプルなので人に教えやすい。
このような見方をすると、色んなゲームのいいとこ取りをしてるようにも思えてくるかも…。
先に挙げたゲームは全て知名度・奥深さ・ゲーム性と、どれを取っても一級品です。Quoridorはまだ歴史が浅く(Blockadeはそこそこ古い)、知名度も低いですが、これらのゲームに比肩するポテンシャルを秘めていると、個人的には感じています。
2010年に日本の金沢で開かれた第15回コンピュータ・オリンピックの種目の一つにQuoridorがありました。その優勝プログラムであるQAIですが、、それをつくった人が自分で考えた定跡に対処できなかった、とその人の論文に書いてあります。→論文について
今のところは、コンピュータより人間の方が強いということですね。
将来的に、チェッカーやNeutreekoのように完全に解析される可能性もないとは言えませんが…。
しかしその場合も安心かもしれません。Quoridorは囲碁やHexといったゲームと同じでボードのサイズや板の枚数を変えてもゲーム性は変わらないので、もし仮にQuoridorの9*9ボードが解析されてしまったならば、次はもっと広いBlockadeやPinko Pallinoを研究すればいいのですから。
Game complexity - Wikipediaを見ると、Quoridorもなかなか複雑なゲームだということが分かります。
(2018年追記)AlphaZeroというAIがDeepMind社によって開発されました。これはディープニューラルネットワークとモンテカルロ法からなるアルゴリズムであり、特にアブストラクトゲームのAI作成と非常に相性が良いです。計算リソースをつぎ込むことで(実はここが一番難しい問題なのですが)Quoridor専用AIを作成することができ、出来上がったAIに人間はもはや勝てないと思われます。
Quoridorは有名なボードゲームオンライン対戦サイトであるBoard Game Arenaでプレイでき、そのサイトも最近日本語化したため、徐々に名前は売れてきてるのでは、と思っています。
またGigamic社製のQuoridorは、確か2009年頃は日本では発売されていなかった(Amazonで並行輸入品は買えた)記憶があります。2014年現在ではCAST JAPANという会社が日本で販売しているようです。→商品について
これを機に日本のプレイヤーが増えるといいですね。このサイトもQuoridorの普及に少しでも協力できればと思っています。
最後になりましたが、実はこのQuoridor、4人対戦ができます。バランスが悪いことに目を瞑れば、3人対戦もやろうと思えば可能です。
ただ、4人対戦で遊ぶ場合は2人の時とはゲーム性がガラリと変わります。特に致命的なのがキングメーカー問題です。
キングメーカー問題とは、もはや1位を狙えなくなった3位や4位の人の行動が1位の人を決定してしまう、というものです。つまり、1位が取れなくなった時点でゲームを諦め、勝たせたい誰かを勝たせることができてしまいます。ゲームの最初から特定のプレイヤーを妨害することだけを考えれば、自分は4位、その人を3位にすることぐらいはできるでしょう。
2人対戦はガチガチの戦略ゲーム、4人対戦は深く考えずみんなでワイワイ楽しむパーティゲーム、という認識にしておくと良いかと思います。
自分でルールを改変するのも良いでしょう。例えばこのような楽しみ方もあるみたいです。
ちなみに、このサイトのコンテンツは全て、2人対戦を前提としています。
参考